届屋ぎんかの怪異譚
「朔には知られたくなかったのになぁ。おまけに、猫目にもばれちゃうし。びっくりしたでしょ?」
ふふ、と笑う銀花に、猫目は何も言えずにいる。
「おまえ、……妖、なのか」
朔が言った。銀花はふたたび、ふふ、と笑って答える。
「そうね。でも、人でもあるわ」
「……どういうことだ」
「人であり、妖でもある。その一方で妖でもなく、人でもない。――聞いたことくらいは、あるでしょう?」
その言葉に、朔は絶句した。
聞いたことくらいは、ある。
だが、実在するとは思わなかった。
その、境の存在は――。
「半妖。――あたしは、人と、水月鬼(みつきおに)との間の、半妖よ」
銀花の澄んだ声が、その名を告げた。