届屋ぎんかの怪異譚
4
4
――――――――――
窓を見上げると、庇の向こうの空は浅縹の色に染まっていた。
少しも眠れていないのに、朝が来てしまった。
「二人とも、びっくりしてたよなぁ」
普段ならもう起きている時刻だが、布団に潜ったまま、銀花は呟く。
そっと目を閉じると、昨夜のことが脳裏に浮かぶ。
「……みつき、おに」
長い長い沈黙の後、呆然としたままうわ言のように言ったのは猫目だった。
「そう。知らないかしら? 数の少ない妖だったから。人とあまり変わらない見た目で、あたしにはないけれど、額にツノが一本生えていてね」
銀花は明るく笑ってみせて、べらべらと話し出した。
何か話していないと、沈黙に耐えられそうになかったのだ。
「満月の光を浴びると、その目が月の色に輝く妖なの。もう十数年前に――」
「滅んでしまった」
銀花の言葉を引き継いだのは、朔だった。