届屋ぎんかの怪異譚
すぐに現れた風伯は、銀花の瞳と二人の顔を見て事態を察したのだろう、悲しげに目を伏せて銀花の手を握った。
「銀花、帰る?」
しかし、銀花は首を振る。
「二人を、先に帰してあげてくれる? あたし、すこし散歩してから帰るから」
そう言うと、朔が「おい、」と声を上げたが、それに被せるようにして「お願い」と、銀花は言った。
勝手だと、わかっている。
わがままだと、わかっている。
それでも朔や猫目が自分を見る目が変わってしまうのを見たくなくて、それ以上、二人のそばにいたくなくて。
風伯は「わかった」と言うと、有無を言わさず二人を連れて行ってしまった。
(それから、どうやって帰ったんだっけな……)
覚えていない。
ただぼんやりと歩きまわって、気が付いたら家に帰っていた。
風伯が布団を用意して待っていてくれて、銀花が寝るとそのままどこかへ行ってしまった。