届屋ぎんかの怪異譚
考えるのも面倒だった。
今頃になって、眠たくなってきた。
今日はもう店を開けずに眠ってしまおうか、と、銀花が目を閉じたとき。
ドンドン、と、門を叩く音がした。
(お客さんかしら……?)
開けずにおこうかと思った矢先に何よ、と、理不尽な苛立ちを覚えながら、銀花は布団から這い出る。
ドンドンと再び叩く音に「はあい」と応えて、手早く着物を調えると門を開けた。
そして、そのまま固まった。
「よう」
と、銀花を見下ろして仏頂面で言ったのは。
「朔……?」
信じられない思いで、銀花は朔の顔をまじまじと見つめる。
「どう、したの……?」
あの妖嫌いの朔だ。半妖と知れば、二度と銀花に話しかけてもくれないだろうと思ったいたのに。
斬りに来たのだろうか、という一瞬だけ頭をよぎる。だが。