届屋ぎんかの怪異譚



考えるのも面倒だった。

今頃になって、眠たくなってきた。

今日はもう店を開けずに眠ってしまおうか、と、銀花が目を閉じたとき。



ドンドン、と、門を叩く音がした。



(お客さんかしら……?)



開けずにおこうかと思った矢先に何よ、と、理不尽な苛立ちを覚えながら、銀花は布団から這い出る。


ドンドンと再び叩く音に「はあい」と応えて、手早く着物を調えると門を開けた。



そして、そのまま固まった。



「よう」



と、銀花を見下ろして仏頂面で言ったのは。



「朔……?」



信じられない思いで、銀花は朔の顔をまじまじと見つめる。



「どう、したの……?」



あの妖嫌いの朔だ。半妖と知れば、二度と銀花に話しかけてもくれないだろうと思ったいたのに。



斬りに来たのだろうか、という一瞬だけ頭をよぎる。だが。


< 128 / 304 >

この作品をシェア

pagetop