届屋ぎんかの怪異譚



「……おまえはそう言うと思ってた」



銀花の答えを聞いて、朔は安心したように息を吐いた。



「これで、あいこだ」


「あいこ?」


「俺はおまえの秘密を知って、おまえは俺の秘密を知った。その上で、互いに互いを憎めないことを知った。だから……」



朔がそこで、一度言葉を切った。


しばらく待ってみても続けようとしないので、「だから?」と、銀花は促す。



すると不機嫌そうに眉間に皺を寄せて、朔は銀花から目をそらした。



「昨日みたいな、あんな顔は、もうするな」



「……え?」



「おまえは、馬鹿みたいに呑気に笑ってる方がお似合いだ」



さっきまでの真剣さとうって変わって、苛立ったような投げやりな口調で、朔は言う。


銀花は思わず吹き出した。



「朔って……」


「なんだよ」


「とっても素直じゃないのね」


「うるさい。斬るぞ」


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