届屋ぎんかの怪異譚
そう言って朔が睨むものだから、銀花は瞳を潤ませて眉尻を下げてみせる。
「斬るの?」
「……斬らねえからその顔やめろ!」
焦ったような朔の反応に、銀花は声を上げて笑った。
「ねえ、朔?」
「なんだよ」
呼びかけたら、応えてくれる。
銀花が人だろうが、半妖だろうが、関係なく。
そのことが、たまらなく嬉しい。
「ありがとう」
泣きそうな顔で笑って言うと、朔は「べつに」と言ってそっぽを向いてしまう。
そして短い沈黙の後、「昔、」と、遠くを見るような眼差しを虚空へ向け、朔は言った。
「俺に妖退治を教えた師匠に、おまえのことを聞いたことがあった」
「あたしの、こと?」
「もちろん当時はおまえだなんて知らなかったが、……半妖の赤子を助けたことがある、と」