届屋ぎんかの怪異譚
お使いを果たした少年は、数刻前とは大違いの、
どこか晴れ晴れした表情で「じゃあ」と言うと、まっすぐ村の方へ帰っていく。
銀花はそれを見届けると、ごく小さな声で「風伯」と呟いた。
遠くにいる者を呼ぶには、およそ足りない声量であったが、
風伯は銀花がまばたき一つするうちに、突風を巻きあげて飛んできた。
「終わったの?」と、息を弾ませて問う風伯に、銀花は小さく頷いて、
「帰ろっか」と笑った。
頷いた風伯が瞬き一つすると、銀花の周りに風が集まりだす。
風は銀花自身に触れないように、銀花を囲む竜巻を作ると、ふわっと空に舞い上がる。
風伯が風に乗せて銀花を運ぶとき、できるだけ速く、かつ安全に銀花を運べる技だ。