届屋ぎんかの怪異譚
「……大丈夫そうね」
嵐が去った後のように静かになった部屋の中、銀花がぽつりと言う。
すると。
「……ふ、」
そっと息を吐くような、控えめな笑い声がして、銀花は顔を上げた。
見上げた朔は目元を優しく和らげて、銀花の頭に手を伸ばす。
大きな手のひらで髪をぐしゃぐしゃとかき回されて、銀花はそれでも抵抗できずにいた。
柔らかなその笑みが、一瞬、泣き笑いのように見えて、銀花は気づく。
自分が思っていたよりも、朔に心配をかけてしまっていたこと。
「おまえさ、……弥吉より、自分の心配しろよな」
憑かれてんのはおまえなんだから、と、朔に言われて、銀花は困ったような笑みを返した。
「だって、弥吉さんを助けに来たんだもの」
そう言うと、朔は笑みを深くして「おまえらしいな」と言う。