届屋ぎんかの怪異譚
「こういうときに、すごく頼りになる友達がいるの。風伯が戻ってきたら、そのひとのところへ連れて行ってもらう。朔もついて来る?」
なぜか困ったような笑みを浮かべて言う銀花に、朔は「当たり前だ」と頷く。
もともとは朔の仕事だ。来るなと言われたならともかく、そうでないならついて行かないわけがない。
「それで、そいつはどこに?」
風伯に頼るということは遠くに住んでいるのか。そう朔が尋ねると。
「驚かないでね?」と、銀花はますます困ったような顔をして言った。
風の音が強くなった。
風伯がもうすぐ戻ってくるのだ。
その音につられたように銀花は空を見上げ、そしてぽつりと、つぶやくように告げる。
「――江戸城よ」