届屋ぎんかの怪異譚

２

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紫紺に染まる空の下、江戸の町の真ん中に堂々とそびえ立つ御城の上を飛ぶ三つの影があった。



影はふよふよと漂い、大手門の上を通過して、ゆっくりと下降してくる。


さらに中之門を通りすぎて大番所にたどり着くと、三人――銀花と朔、風伯は、音もなく着地した。



まるでそれまで息を止めていたかのように、朔が大きく息を吐いた。


その隣で風に乱れた髪を手早く整え、銀花はすました顔をしている。



「……よく見つからないな」



空を飛んで大番所まで行く道すがら、地上には多くの人通りがあった。


江戸の町中はもちろんのこと、大手門の内側にも警護の兵の姿があった。



誰かが上を見て気づかれはしないだろうかと、ずっとひやひやしていたのだろう。


なにしろ、いつも風伯の風に乗るときには、地を行く人々が上を見上げても鳥か何かにしか見えないほど高く飛ぶのに、今回は家々の屋根くらいの高さを飛んでいたのだ。



銀花はそんな朔に苦笑して、「風伯の妖術で、見えなくしてるのよ」と言う。



「疲れるから嫌いなんだけどねー。ここに来るときには、そうしないと入れないから」