届屋ぎんかの怪異譚
風伯の作る暖かい風の中で、寒さで強張った体がほぐれていくのを感じながら、銀花はいたずらっぽく笑うと、
「そういえば、息子さんに着物届けているときの、あの暖かい風。風伯のしわざでしょ?」
と言って、風伯の頬をつついた。
「あ、わかった?」
されるがままになりながら、風伯は言う。
「そりゃあ、わかるわよ。まあ、いい演出ではあったわね」
ありがとう、と。銀花に言われたのが嬉しくて、風伯はにんまり笑う。
気の緩んだ風伯の操る竜巻がほんの少しだけ乱れたことに、
銀花は気づかなかった。