届屋ぎんかの怪異譚
肩に乗った温度に目を細め、「仕方ないわね」と、小さく呟く。
「やっぱり眠かったんじゃない」
囁く声に、銀花の肩にもたれて気持ちよさそうに寝息を立てる朔の返事はない。
どうしようか。
寝かせておくべきだろうけど、この体勢では眠りにくいことこの上ないだろう。
やはり一度起こして布団で寝てもらうべきだろう。
「あたしの布団は嫌って言ってたけど……」
そんなに汚くないはずだけどなぁ、と苦い顔をしながら、銀花は朔の頭をちょんちょんとつついた。
「朔、ねぇ起きて? 寝るなら布団で寝ましょうね」
まるで幼子にするように優しく揺さぶると、朔は「ん……」と小さな声を上げて薄く目を開ける。
だが、また、目を閉じてしまった。
「ちょっ、朔? ねぇったら……」
「…………おまえ、いい匂い、する……。落ち着く……」
明らかに寝ぼけている。
それがわかっているのに、みるみる顔が熱くなっていくのが自分でもわかって、銀花は狼狽えた。