届屋ぎんかの怪異譚
風伯の怒鳴り声に、朔は一瞬、虚を突かれたように目を点にした。
それからきょろきょろと辺りを見渡し、銀花の痩せた肩にずっと乗せていたせいですこし痛むであろう頭の右側をおさえ、最後に隣に座る銀花を見ると。
「……う、わっ! わ、悪い!」
面白いくらい顔を赤くして、面白いくらいの速さで銀花から離れると、面白いくらい勢いよく顔を背けた。
その反応に、銀花と風伯がおもわず吹き出した。
「はははっ! 朔、顔赤い!」
自分を指差して笑う風伯を朔は睨みつけながら、「おまえがここに来るってことは、なにか進展があったのか」と、無理やり話題を変えようとする。
風伯がやっとその質問に答えたのは、ひとしきり笑った後だった。
「うん。朧車を見つけた。今、二藍と今様が追ってる。どこへ行くのかはまだわからないけど」
どうする、と、問うような眼差しを受けて、銀花と朔は静かに頷いた。
「二藍と今様のところへ、連れてって」
二人がそう言うであろうことは予想していたのだろう。
銀花の言葉が終わると同時に、風伯の風がふたりを包んだ。