届屋ぎんかの怪異譚
「わたしたちを連れて行った後、風伯は今様と一緒にここへ戻って。猫目と糺をお願い」
「駄目だ。俺も行く」
突然聞こえたその声に、三人はそろって振り向いた。
「猫目!」
さっきまで眠っていた猫目がもう起きて、かるく着物を整えると三人の前に立った。
「俺も一緒に行く。……予感が、あるんだ」
小さくつぶやくようなその言葉の意味を、猫目以外に知る者はいない。
けれど飄々とした猫目らしくない静かな表情に、誰も、何も尋ねることができないでいた。
「糺さんはしばらく萩姫に預けよう。俺の結界もこれ以上保たないし、もし本当に大量の縊鬼と朧車を使役している術師がいるなら、戦力を確保する意味でも、いつまでも誰かが見張っているわけにもいかない。
萩姫のところのかずらさんなら、糺さんが万一また暴走してもなんとかできるだろう」
「……そうね。わかったわ。風伯、糺さんを萩のところへ連れて行ってくれる?」
「う。……はい」
嫌そうに顔をしかめながらも、風伯は頷いた。
みるみるうちに風は勢いを増し、竜巻となって四人を包む。