届屋ぎんかの怪異譚
だんだんきつくなってくるにおいに、銀花が顔をしかめた、そのときだった。
まだ続くと思われた木々が、唐突に途切れた。
「着いた」と言うよりは「現れた」と言った方がいいほどに、あまりにも突然に現れたその場所。
そう、例えば何か、巨大な火の玉のようなものを山の中腹にぶつければできあがるだろうか。
そこは、山の木々も草地も何もかもが円の形に切り取られたようにして消失していた。
あるのはただ、裸の土肌のみ。
その土肌と緑との境にある木々の枝の端に焼け焦げたような跡があることで、かろうじてその更地が炎によってできたのだとわかる。
そして。
更地の真ん中に、うず高く積まれた、死体の山。
「……う……っ!?」
猛烈な吐き気に襲われて、銀花は思わず口を押さえてうずくまった。
そのときになってようやく、自分がもう風伯の風から降ろされて地面に立っていたことに気づいた。
猫目が慌てたように銀花の背をさする。
「大丈夫?」と覗きこむその目に、吐き気を呑み込んだ銀花はなんとか笑みを作ってみせた。