届屋ぎんかの怪異譚
とたん、胸の奥で泉が湧くような感覚がした。
それは暖かな懐かしさ。
そして、底のない後悔と心配。
どうしてそんな気持ちが湧いてきたのかは、銀花自身にもわからない。
「どうやって切り出せばいいか、迷っていて。……教えていただけますか? 玉響さん」
「長い話になるから、眠くなったら好きなときに寝ていいよ。明日また続きから話すから」
「ありがとうございます」
玉響の気遣いに深く頭を下げると、銀花は居住まいを正した。
祖母でさえも多くを語ってはくれなかった、父と母のこと。
ずっと知りたかった父と母のこと。
ようやく知ることができると思うと、緊張で背筋が伸びる心地がした。
囲炉裏の炎が玉響の顔を照らして、影が揺れる。
それが合図だったかのように、玉響は口を開いた。
「わたしと山吹と白檀は、幼馴染だった――」