届屋ぎんかの怪異譚
「それまでは……?」
不穏な言葉に眉をひそめる銀花に、玉響は薄い笑みを返す。
「ねぇ、銀花。続きは明日にしよう」
「え?」
ここから、というときに唐突に話を切られて、銀花はきょとんとした顔で玉響を見返した。
「山吹と月詠を――二人がどんなふうに出会って、どんなふうに心を通わせたのか、わたしは知らないんだ。
山吹は決して語ろうとしなかったから。
だから、明日一緒に知っている人に会いに行こう。今日の続きも、そのとき話すよ」
思わぬ言葉に、銀花は目を見開いた。
玉響以外に、母と父を知る人などいないと思っていた。
「その方は、どこに?」
江戸にいるのだろうか。遠くに住んでいるのだろうか。
父や母とは、どういう知り合いなのだろうか。
勢いこんで尋ねる銀花に、玉響は「君もよく知っている人だよ」と、困ったような笑みを浮かべた。
「え……?」
思い当たる人がいなくて銀花が首をかしげると、玉響は静かに答えを告げた。
「――萩姫だ」