届屋ぎんかの怪異譚
巨大ながしゃどくろの頭よりも高いところから、成す術もなく銀花は落ちていく。
下には迫る地面、上には髑髏の手が銀花を潰そうと襲い来る。
風伯は地に伏したままピクリとも動かない。
死を覚悟して、銀花はぎゅっと目をつむった。
――だが、そのとき。
キン、と高い音が銀花の耳を突き刺した。
次いで、聞いたこともないような大きな爆発音。
何が起きたのかわからず混乱する銀花は、自分の落下が止まっていることにしばらく気がつかなかった。
「……おい、生きてるか」
耳元で囁かれた低い声に驚き、銀花はそこでようやく目を開ける。
見知らぬ青年の顔がそこにはあった。
黒いざんばらの髪を頭の後ろで一つに束ね、ぼろぼろの紺の着物をまとったその青年は、
薄汚れてはいるがよくよく見ればそれなりに整った顔立ちをしている。