届屋ぎんかの怪異譚
萩は小さく笑って、「なら、家まで送ろう」と言い、かたわらのかずらを見上げる。
かずらは頷き、銀花の手を取った。
「すこし、目を閉じていてください。神通力で家までお送りします。――あぁ、そうでした、糺さんはご自宅でお休みいただいておりますよ。妖の力を抑える結界も張りました」
「姿が見えないからどうしたのかと思っていたけど、そうだったんですね。よかった」
銀花は言って、目を閉じた。
瞬間、ふわりと体が浮くような感覚がして、嗅ぎ慣れた乾いた草の香りがした。
銀花のよく知る、薬の香り。
――もう目を開けても大丈夫ですよ。
かずらの声に目を開けると、思った通り家にいた。
となりには玉響がいて、萩はもちろん、かずらの姿はない。
――銀花様、どうか、危ないことだけはなされませんよう。
直接頭に響くかずらの声に、銀花は苦笑した。
萩とかずらには、お見通しのようだ。