届屋ぎんかの怪異譚
「……なに、その刀……」
青年の刀は、刀身に炎を纏っていた。
――どこまでも冷たい色で、何ものをも無情に燃やし尽くしてしまう、蒼い炎。
目の前の敵に集中するためか、あるいはただ面倒になったのか、
青年は銀花の言葉には答えない。
鋭い眼光でがしゃどくろを睨みつけ、青年を叩き潰そうと振り下ろされるどくろの左手に、蒼炎の刀を一閃する。
キン、と、骨と刀のぶつかる高い音。
そして次の瞬間には、蒼い炎がどくろの左腕を覆い尽くしていた。
蒼炎はどくろの左腕を容赦無く灼く。
がしゃどくろは叫声を上げて暴れまわり、憎しみの闇を宿した眼窩で青年を睨みつけた。
がしゃどくろは死者の怨みの集合体。
生きる者すべてを食らう亡者は、両腕を失ってもまだ、その顎(あぎと)を大きく開けて青年を食らおうと襲いかかる。
だが、すでに勝敗は明らかだった。
青年は表情一つ変えずに、向かってくるがしゃどくろの頭に刀を振り下ろす。
蒼い光は骸骨を真二つに両断した。