届屋ぎんかの怪異譚
「あたしの知ったことじゃないわよ」
言いながら、遠ざかる背中を小走りで追いかけた。
追いついた銀花に猫目は困ったように笑いかけた。
「わたしも行くよ。わたしは、白檀の友だからね。関係なら大有りだ」
ついて来た玉響が言う。
そしてちらりと銀花を見下ろすと、「この子にはわたしがついているさ」と、小さくつけ加える。
玉響のなにげない後押しに、銀花は心中で礼を言った。
「……勝手にしろ」
不服そうに、朔は振り向かずに言った。
ぶっきらぼうな言い方ではあったが、それでも、共に行くことを認めてくれたことが銀花は嬉しくて。
「ええ、もちろんよ」
強気を装って言った顔は自然と笑っていた。
話が落ち着いたところで、銀花は前を行く猫目を見た。
――彼に、伝えたいことがある。
銀花の視線に気づいてか、朔の隣を歩いていた猫目が、ふと歩調をゆるめ、銀花にならんだ。
「本当に、危ないことはしないでね」
心配そうな顔で、猫目は言う。
「ええ。……あのね、猫目」