届屋ぎんかの怪異譚
常人の耳には聞こえない断末魔の声を上げ、がしゃどくろは見る間に蒼い炎に呑まれて消えていく。
灰のひとつも残さずに。
あとに残されたのは静かな夜と、地面に倒れ伏した小さな影。
「風伯……!」
駆け寄りながら、銀花は安堵を覚えていた。
妖は死体を残さない。妖の死とは消滅を意味するのだ。
――風伯は生きている。
倒れた風伯を仰向けにして、銀花はその頬にそっと触れた。
「風伯、ごめんね。あたしのせいで……」
安心して気が抜けたせいか、涙があふれそうになって、銀花はぎゅっと目をつむった。
今は泣いている場合じゃない。風伯をどうにかして家まで運び、傷の手当をしなくては。
その前に、と、銀花は立ち上がった。
助けてくれたお礼を言わないと。