届屋ぎんかの怪異譚
それが人間の骨だと悟った瞬間、銀花は屋敷に入ってからずっと感じていた血の匂いの正体に感づいた。
銀花だけではない。
玉響も、猫目も、朔も、おぞましさに顔をしかめていた。
「……人を、喰ったのか」
震える声で、玉響が言った。
「完全に邪に転じたか」
吐き捨てるように言ったのは朔だ。
「縊鬼に殺させた者たちの屍を見たでしょう? あそこに溜めておいて、腹が減ったときに火車に運ばせていたのよ」
「あの者たちはおまえの餌にするために殺した、と?」
睨みつける朔を、まるで虫けらを見るような冷たい目で見下ろし、白檀は歪んだ笑みを浮かべた。
「短絡的な。そのためだけにあれほどまでの死体はいらない。あれらはお前を見つけ出すための目とするために集めたのよ」
たしかに、あの森の中で見た死体の山は皆、目がくりぬかれていた。
あれは朔を探すために、呪術によって己の目とするためにくり抜いたのか。
そんなことのために、あれほどたくさんの人を殺したのか。