届屋ぎんかの怪異譚
青年を探して振り返った銀花は、驚きに思わず「うわっ」と声を上げた。
青年が、いつのまにか銀花のすぐ後ろにいたのだ。
黙ったまま見下ろしてくる青年に、銀花は「あの……」と遠慮がちに話しかける。
「助けてくれて、本当にあ――」
「それは、何だ」
礼を言おうとした銀花の言葉を遮り、青年が言った。
「え……?」
「それは何だと尋ねたんだ」
「それ、って、えっと……」
「それだ。その倒れてるのは何だ」
青年の指がさす方を目で追うと、そこには倒れた風伯がいる。
「あ、彼はあたしの友達なの。風伯というの」
「友達? その化け物がか?」
そのあまりの言い草に、銀花は眉をひそめた。