届屋ぎんかの怪異譚
「ちょっと! 風伯はたしかに妖だけれど……あたしの大切な友達に化け物って、ひどいこと言わないでくれる?」
「妖は化け物と同義。何も間違っていない」
「違うわ! 言葉の含みが全然違う」
青年と風伯の間に立って、銀花は青年を睨みつける。
それを冷たい目で見下ろして、「退け」と、青年は低い声で言った。
「どうして退かなきゃいけないの。風伯に何か用?」
「いいから退け。おまえもまとめて斬るぞ」
そう言った青年の手には、がしゃどくろを倒したにもかかわらず、未だ鞘に収められていない蒼炎の刀。
銀花は「まさか」と小さくつぶやき、顔をこわばらせた。
「あなたまさか、風伯を斬る気なの!?」
怯えを宿した銀花の目を、青年は何の感情も見えない暗い目で見やり、
「出会った妖は片端から斬る」
と、当然のことのように答えた。