届屋ぎんかの怪異譚



「もともと、もうほとんど尽きかけた命だったんだ。多くの妖を使役するために、長年生気を削ってきたから。だからせめて、残りわずかな命を、友の大切な娘のために使いたいと。……そう、言ってた」



ぽつぽつと、朔が語り始める。


銀花が晦に刺されてから、その後のことを。



今、三人が乗っているのは、白檀が使役していた朧車だという。


白檀の式でなくなったが、解放された礼にと、自ら三人を運ぶ役目を買って出てくれたらしい。



晦の魂は山吹が連れて行った。


銀花を刺したとき、晦の体にはほとんど犬神しか残っていなかったようだった。


ほんのわずかに残った晦の魂が、刀の軌道を逸らして、かろうじて心の臓を避けたように見えたと、猫目は言った。



晦の魂が抜けて、晦の体は砂塵となって消え、骨も残らなかった。


姿を現した犬神を封じたのは玉響と猫目だ。



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