届屋ぎんかの怪異譚
(すごい熱……。どうして? さっきまで普通だったのに)
膝をついて息を荒くする青年の体を支えようとしゃがみこんだとき、
銀花は青年の腰に下がった刀が光を放っているのを見た。
(蒼い、光……? さっきみたいに炎が出ているわけじゃないけれど)
おそるおそる触ってみて、銀花は目を見張った。
刀が、まるで生物のようにほのかに暖かく、さらに――脈打っていたのだ。
「これ、やっぱり……妖刀、なの……?」
蒼炎をまとう刀身を見たときからそうではないかと思ってはいたが、青年自身の妖術でないとも限らなかった。
けれど、こうなるともう疑いようがない。
妖刀。妖や鬼を宿し、宿した妖鬼の力を発揮する刀。
聞いたことはあったが、実際に見たことはなかった。
そこまで考えて、銀花はハッと息を呑んだ。
妖刀の中には、持ち主に悪影響を及ぼすものもあると聞く。
例えば、持ち主に不幸をもたらしたり、持ち主の生気を奪ったり。
――この青年が突然倒れたのも、もしかしたら。
「とにかく、早くうちに連れていって介抱しないと……」