届屋ぎんかの怪異譚



銀花が尋ねると、糺は銀花の店の向かいにある長屋を指差した。


糺の管理する長屋だ。



「長屋に新しい住人が増えるんで、迎えに行くんだ。

……あ、すまねえ、銀花ちゃん」



唐突に謝った糺に、銀花は「なにが?」と、首をかしげた。



「あ、いや、銀花ちゃんの店の前を待ち合わせ場所にしてたんだ。

この辺りじゃあ、ここが一番目印になるってんで」



「あら、そんなの全然構わないわ」



「面目ねぇ」



ぺこりと頭を下げた糺に、銀花は笑って首を振った。



「しかし、もう来るはずなんだがなぁ」



どっかで迷ってんのかねぇ、と、頭をポリポリ掻きながら糺が言ったとき。



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