届屋ぎんかの怪異譚
「わっ、何すんだよ!」
焦ったような風伯の声がした。続いて、バタバタと走り回るような音。
「ちょっと、どうしたの風伯?」
怪訝な顔で家の中に引っ込んだ銀花は、その光景を見て、思わず悲鳴をあげた。
天井近くを飛び回りながら逃げる風伯と、それを追いかける青年。
その手には、蒼炎の刀が握られている。
「あなた何してるのっ!? やめてよ!」
そう叫んで、銀花が青年と風伯の間に割って入ると、青年は刀をかざして「退け」と命じた。
「次会ったら斬ると言った。退け」
「そう言ったかもしれないけど、了承はしていないわ。退かない」