届屋ぎんかの怪異譚
「寒く、ない」
少年は震える声で応えた。
どこからどう見ても寒がっているのは明白だが、娘はそれ以上は追及せず、少年の隣にそっと腰をおろした。
「この辺り、雪が深いのね」
急に隣に座って話し出した娘に怪訝そうにしながらも、
少年は「普通だよ、これくらい」と、小さな声で言う。
「そうなの? あたしは江戸から来たから、この辺りの寒さはほんとうにこたえるわ」
「なんでまた、そんな遠いところから」
「あなたに会いに来たのよ」
「え?」
少年は目を丸くして、はじめて娘の目を見た。