届屋ぎんかの怪異譚



青年の問いに、銀花はきょとんとした顔をした。



「え、どこって……ここ、だけど」



「は?」



「ここよ。橘屋。あたしが店主の橘銀花。……橘屋を探していたの?」



銀花が問うと、青年は「いや、」と言ったきり、何も言わない。



すると突然、それまで黙って見ていた糺が「なぁ、あんた」と、声を上げた。



「あんたひょっとして、朔殿かい?」



問われた青年は、「すると、あんたが糺か」と、問い返した。



「え、これってまさか……」



顔を引きつらせた銀花に、糺が呑気に「そのまさかだなぁ」と言った。


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