届屋ぎんかの怪異譚
「……この人が、長屋の新しい住人なの!?」
あからさまに嫌そうな銀花に、青年は――朔は、舌打ちを一つ。
「こんな妖怪女の向かいかよ……」
「妖怪女って、失礼ね!」
「妖怪と仲良くしてるなんて、妖怪みたいなもんだろ」
「あなたねぇ……!」
あまりにも無礼な朔の態度に、銀花は憤慨して言葉を失った。
その背後で、風伯は怯えたように縮こまっている。
「まあまあ、二人とも。これから隣人同士なわけだし、仲良くしようや」
にこにこ笑って呑気に言う糺に、
「できるか」
「できないわ! 」
と、二人の声が重なった。