届屋ぎんかの怪異譚
銀花と朔は互いに睨み合い、同時にそっぽを向いた。
その様子に糺は吹き出しそうになるのを、ぐっとこらえた。
そんな糺を睨み、朔は向かいの長屋へ歩いていく。
糺が「じゃあな、銀花ちゃん」と言って朔について行くのを見届けて、
銀花も途中だった開店準備に戻った。
しかしその顔に、先ほどまでの元気はなく。
(まさか、あんな人が向かいに越してくるなんて。これからうまくやっていけるかしら……)
江戸の曇った冬空を見上げて、銀花は白いため息を吐いた。