届屋ぎんかの怪異譚
「ちらちら見るな」
「べつに、あなたを見たわけじゃない」
ふん、と、そっぽを向いて、銀花はたくあんを口の中に放り込む。
男――朔も同じく、そっぽを向いて味噌汁をすすった。
「二人とも、仲いいなぁ」
と、口をもぐもぐさせながら、糺が言うと。
「どうやったらこれが仲良く見えるのよ」
「こんな妖怪女と誰が仲良くするか」
「物覚えが悪いのね。
あたしの名前は妖怪女じゃなくて銀花だって、昨日言ったばかりよ?」
「あいにく妖怪の名前を覚える気はねぇんで」