届屋ぎんかの怪異譚
「まあ、そういうことね。むやみやたらに妖を斬らないで。
約束を守ってくれたら、これから先もその薬をあなたにだけはただであげる。
悪い話じゃあないでしょう?」
にっこり笑って銀花が言うと、朔は舌打ちを一つして、薬を懐にしまい込む。
――受け取ったということは、それは了承したということだ。
「交渉成立ね。よかった」
安心したように言って、銀花はお茶を飲み干して立ち上がった。
「糺さん、ごちそうさま。美味しかったわ」
それじゃああたし、そろそろ店を開けないと。銀花はそう言って糺の家を後にする。
後に残された朔は、食事は済んでいたが席を立たなかった。
帰り道が同じなので、今糺の家を出れば銀花に追いついてしまうからだ。