届屋ぎんかの怪異譚
「ぼくに? なんで……」
「あなたと、あなたのお父さんに届けるものがあるの」
日はもう遠くの峰に沈みきって、空は濃藍色になっていた。
少年の父親は、家の中で夕飯の支度でもしているのだろうか。
「僕らに、何の用?」
少年は明らかに怪しい者を見る目で尋ねる。
娘は背負っていた風呂敷包みをはずすと、少年に差し出した。
「あなたの、亡くなったお母さんから預かったの。あなたに届けてほしいって」
呆然として受け取ろうとしない少年に、「開けてみて」と、娘は促す。
すると、少年はようやくおずおずと風呂敷に手を伸ばした。