届屋ぎんかの怪異譚
今日はいつもより客が少ない。
朝に常連の男が一人、それから旦那が風邪を引いたという女が一人、つわりのひどい身重の女が一人。
それから昼を過ぎて三、四人来て、先ほどの常連のかずらが来たところで、外を見るともう道行く人の影が長くなっていた。
「ひまだなあ」と、ひとりごとを言ってみる。
窓から橙に染まり始めた空を見上げて、そろそろ店を閉めようか、と銀花が思った、そのとき。
開け放した戸から、なにか白いものがすごい勢いで銀花めがけて飛んできた。
「銀花――――――!!」
幼い声が叫ぶのと、銀花が頭を抱えて床に伏せるのは同時だった。