届屋ぎんかの怪異譚



白いものは銀花の頭上を通り過ぎて後ろの壁にぶつかり、「いたっ!」と声を上げながら床に落下した。



それを確認してから、銀花はおそるおそる頭を上げる。



「えっと……大丈夫?」



床に落ちた白いものは、もぞもぞと頭を上げる。


それは、雪のように白い毛並みをした狐だった。



もふもふの体で床をころころ走り、白い毛玉は銀花の膝の上に登る。



「久しぶりだなあ、銀花!」



黒いつぶらな瞳で銀花を見上げて、白狐は言った。



「久しぶりね、今様(いまよう)。今様がいるということは、猫目(ねこめ)が帰ってきたのね?」



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