届屋ぎんかの怪異譚
寒さでかじかんだ手で少年が風呂敷包みの結びを解くと、中には松葉色の着物が入っていた。
発色が良く、丁寧に染められたことが一目でわかる。
少年の着物にしては少し大きく、大人の着物にしては少し小さい。
きっと、少年がもう少し大きくなったときに着るために作ったのだろう。
「あなたのために、お母さんが自分で染めて、自分で縫ったものよ。
野盗から守るように、遺体になっても体の下に固く抱いていたそうよ。
……あなたに、受けとってほしかったのよ」
娘が言うと同時に、ふわりと、ほのかに暖かい風が三人を包んだ。
愛しい、懐かしい誰かの体温のような、そんな風だ。