届屋ぎんかの怪異譚
その言葉に、銀花ははじかれたように立ち上がった。
「本当? それ、どこなの? どういう事情なの?
ちょうどもう店を閉めようと思っていたところなの! 連れていってくれる?
あ、遠いようなら風伯を呼んでみるけど、どうする?」
たたみかけるように尋ねる銀花を、猫目は苦笑しながらなだめる。
「落ち着いて、銀花。……そうだなぁ、江戸のはずれのほうだから、ちょっと遠いかな。
風伯がいてくれたらありがたいけど……」
猫目の言葉が終わらないうちに、突然強い風が吹いて、二人は思わず目を閉じた。
それは一瞬のことで、風が止んで目を開けると、そこには風伯がいた。
「呼んだ?」