届屋ぎんかの怪異譚



「風伯! 来てくれたの? ありがとう」



銀花は片付けもそこそこに外へ出ると、店の戸の鍵を閉めた。



「じゃあ、いくよ」と、一声かけて、風伯が風を操って二人を空へ運ぶ。


今様が結界で二人を囲んでくれているおかげで、江戸の町を行く人々は空に舞い上がる二人に気づかない。



「それで、宿屋のおじさんに何を頼まれたの?」



空を渡りながら、銀花は猫目に尋ねた。



「ちょっとだけ、よくわからないことがあるんだけどねぇ」



そんな前置きをして、猫目が話した内容はこうだった。



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