届屋ぎんかの怪異譚



退治屋の仕事を終えて江戸に帰ってきた猫目は、すでに真夜中になっていたので家まで戻るのを諦めて、

知人の宿屋に泊めてもらうことにした。



その宿屋の近くには寂れた小さなお社(やしろ)があって、宿屋の主人の母は少し前まで毎朝お参りをしていた。


だが、もうその母も年なので、十日ほど前に腰を痛めて外を出歩けなくなった。


すぐに治してまたお参りに行くつもりだった宿屋の主人の母だが、なかなか治らず、

宿屋の主人に自分の代わりにお社まで謝りに行ってほしいと言った。


だがその頃、社の周りで人が消えるという噂がささやかれはじめる。


気味が悪くなって社に行きたくなくなった宿屋の主人は、

ちょうどそこに現れた退治屋の猫目に、代わりに行ってきてほしいと頼んだのだ。


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