届屋ぎんかの怪異譚
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風伯の風に乗ったおかげで、銀花一行はまだ陽の沈みきらないうちにくだんの社にたどり着いた。
所々剥げて赤のくすんでしまった小さな鳥居が、寂しげに立っている。
その向こうに、木々に囲まれるようにして、銀花が両腕を広げた幅よりも小さな社があった。
注連縄にぶら下がった紙垂は風雨に傷んでボロボロだ。
そして、その前に佇む一つの影。
「――なんであなたがここにいるのよ!」
鳥居の前に佇む男に、銀花が叫ぶように言った。
「え、なに、知り合い?」と尋ねながら、猫目は男と銀花を交互に見る。
「その質問、そっくりそのまま返してやる」
苦虫を数十匹は噛み潰したような顔で、男は――朔は言った。