届屋ぎんかの怪異譚
朔は無言で頷く。
「おまえもここの妖に用事か」
「ええ」
「そうか。……なら、さっさと行け」
てっきり仕事を横取りされそうになって怒るかと思ったが、朔は意外にもすんなりと銀花に譲った。
「なんだか素直ね。どうしたの?」
「どうもしない。約束は約束だ」
銀花に薬を提供してもらう代わりに、むやみやたらに妖を斬るのをやめる。
たしかにそういう約束だったが、仕事がかかっているときでも約束を守ろうとするとは思わなかった。
「朔って、思っていたより律儀な人なのね」
「うるさい。……ああ、でも、斬る必要があると判断した場合は斬るからな」