届屋ぎんかの怪異譚
途端に少年はボロボロと涙をこぼしはじめた。
それを隠すように着物に顔をうずめて、「ごめんなさい」と呟く。
そうなるともう止まらなかった。
少年は何度も何度も「ごめんなさい」と言い続け、その声は次第に大きくなり、
ついには赤子のように声をあげて泣き出してしまった。
すると、その声を聞きつけてか、戸を勢いよく開けて少年の父親が現れた。
「なんだあんたは」
父親は娘に向かって低く言った。
娘が少年に何か悪さをしたと思ったのだろう。
だが改めて状況を見ると、それではどうも妙だと思ったのか、
父親は怒鳴った直後に怪訝な顔になる。