届屋ぎんかの怪異譚
男の子は返事をしない。ただ黙って、銀花をじっと見ている。
その目をまっすぐに見返して、しばらくの沈黙の後、銀花は静かに言った。
「……ねえ、村の人たちを連れ去ったのは、あなた?」
その問いに、男の子は怯えたような目をした。――それが答えだ。
「……ごめん、なさい……」
小さな小さな声で言って、男の子はうつむく。
その小さな肩が震えているのを見て、銀花はただ、優しく微笑んでささやくように言う。
「ねえ、そばに行ってもいいかしら」
男の子は答えない。
けれど、銀花が一歩踏み出しても、逃げようとはしなかった。