届屋ぎんかの怪異譚
一歩、一歩、男の子に近づく。
まだ害がないかどうかもわからない妖に近づいていく銀花を、朔はなぜだか、追うことも止めることもできなかった。
銀花の邪魔をしてはいけない。直感がそう言っていた。
そして呆然と見ている朔の中、銀花は男の子の前にしゃがみ込むと、その小さな肩を――そっと、抱きしめた。
「うん、わかるよ。ひとりぼっちは寂しいよね。――人も、妖も同じ」
とん、とん、と男の子の背を、銀花は優しく労わるような手つきで叩く。
「でもね、連れ去った人たちを返してほしいの。その人たちがいなくなったら寂しい人たちがいるから」