届屋ぎんかの怪異譚
「じゃあ、――じゃあね、あたしが毎日ここへ来るわ」
悩んだ末に、銀花は言った。男の子は驚いたように目を見張る。
お婆さんの代わりにはなれないかもしれないけれど、と、銀花は苦笑した。
「お店があるからずっといられるわけじゃないけど、一日のうちほんのすこしの間だけでもここへ来る。……だから」
銀花は抱きしめていた男の子を放した。真ん丸な目をまっすぐに見つめ返し、その頬にそっと触れる。
「連れ去った人たちを返して。
またお婆さんに会ったとき、お婆さんが悲しむようなあなたにならないで。お婆さんに恥じるようなあなたにならないで。
次会えたとき、胸を張って『久しぶり』って言おう?」