届屋ぎんかの怪異譚
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帰路に着く頃には、もう日も沈んで夜になっていた。
社の神狐についての説明は、猫目が宿屋の主人にした。社を潰さないでほしい、とも。
宿屋の主人は努力はすると言ってくれたが、彼一人でできることなど限られることは、誰もがわかっていた。
「期待はしてないよ」と笑った猫目に、宿屋の主人は怒ったような真似をしたが、その顔はどこか安心したようだった。
「いやー、まさか社のお狐さまだったなんてね」
夜の空を風伯の風に乗って江戸へ帰る途上、猫目が言った。
「社に住みついた妖じゃなくて、元からあの社に祀られていた神狐だったなんて思わなかった。古すぎて、もう死んだ社だと思ってたから」