届屋ぎんかの怪異譚



「朔が妖を憎む理由を、あたしは知らない。でもただ、妖だ、ってだけで嫌って憎んで、退治しちゃうのは、あたしは嫌」



「それを言って、俺にどうしてほしいんだ」



銀花から目をそらしたまま、朔は言った。



「俺に、妖を退治するなと言いたいのか。妖を好きになれと、言いたいのか」



「違う」



否定した言葉は思いの外に強くて、普段柔らかな物言いをする銀花の声で発せられたそれに、黙って聞いていた猫目はすこし、意外そうな顔をした。



「違うの。あたしの考えを朔に押し付けるつもりはない。ただ――ただね、退治屋という仕事は、妖を何でもかんでも退治するためにあるのではない、と思うの」



「何が言いたい」



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